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スペシャルレポート

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Special Report07 移植できるよう準備を開始することが目標です 磐田市立総合病院血液内科 部長 藤澤紳哉先生

医師になった動機

自分が医師を目指そうと思ったのは、「世の中にいろいろな仕事がある中で、「崩しにくい善」という仕事を選びたかったというのがきっかけです。崩しにくい善というのは、誰からも喜ばれるであろう仕事ということです。

そう話してくださるのは2013年4月より磐田市立総合病院血液内科に赴任された藤澤先生だ。
藤澤先生が医師を目指したのは、東京大学文学部に在籍されていた時だったそうだ。

血液内科を選択したのは、医学生時代に自分が血液の病気になり治療を受けたことが挙げられます。血液内科の病気は病気自体が命にかかわることが多く、さらに血液疾患を専門とする医師の数も少ないですから、その状況を何とかしたいという気持ちが強かったことが大きな理由です。

究極の一般内科

血液内科は専門色が強いと思われがちですが、全身をみることになりますので、内科全般、すなわち色々な分野に精通できる科です。例えば、白血病の患者さんに抗がん剤を投与したとします。すると副作用として白血球が減少し、感染症を起こす危険性が高まります。抗生物質の知識以外に、肝機能、電解質、血糖も含めた全身の知識、管理が必要になってきます。当然、貧血や血小板の減少もありますので輸血の知識も必要になります。患者さんを治すために、とにかく自分の手腕が問われます。どの分野に関しても一定以上精通していないといけない。言わば究極の一般内科という一面を持ち合わせているのではないでしょうか。

最先端の分野

研究分野では血液学は最先端をリードしてきました。これは、研究成果が臨床に取り入れやすいということがひとつの理由に挙げられると思います。研究に必要な腫瘍細胞が採血などの簡単な手技で、患者さんの負担なく入手しやすいのです。そのため、研究の段階で分かったことが臨床に導入されるスピードが他の分野よりも速いと思います。現在、治療の効果が実証されている分子標的療法剤も血液内科ではいち早く導入され、さらに次世代の薬剤も開発されつつあります。 iPS細胞から血小板を産生できるとの発表もありました。輸血製剤は献血によって成り立っていますが、iPS細胞から産生することができるようになれば、現在、問題となっている血液製剤不足や輸血後感染症の心配もなくなります。ただ、実際に患者さんに投与できるようになるためには、まだもう少し時間がかかります。
私自身は研究よりも臨床の場で患者さんを診ている方が好きですので、基礎研究に携わる期間も短かったのですが、今後の血液疾患の研究の進歩にはとても期待しています。

磐田市立総合病院での目標

県西部地区で移植治療ができる施設は浜松医科大学と浜松医療センターしかありません。両院とも今以上の患者さんの受け入れに余裕がない状況です。目下の目標は磐田市周辺の患者さんを磐田地区の当院で移植できるようにすることです。そのためにはクリーンルームなどの設備も必要ですし、移植の種類によっては認定施設にもならなければいけません。それには一定の症例数も経験しなければなりません。私自身は浜松医科大学や浜松医療センターでの勤務時代に多くの移植を経験してきました。移植認定施設の有無に関わらず、患者さんに安心して治療を受けていただく土壌は整っています。

静かにお話ししてくださる藤澤先生には、ロードマップがはっきりと見えている様に思えた。

経験してみないと、その面白さとやり甲斐がわかりにくい血液内科。

当院には多くの初期研修医がいます。現在の研修制度では血液内科のローテ―トは1ヶ月ですので、血液内科の面白さとやり甲斐を理解してもらうには十分とは言えません。血液内科の患者さんは半年程の入院をされるケースも多いです。本当に魅力を感じてもらうためには1ヶ月は短いように思います。血液内科は難しいという話を聞きます。しかしいざ診療に当たると、非常に系統だった分野であり、治療法にも多くのエビデンスが判明しており、標準治療が明確な疾患も多いです。
血液内科に少しでも興味がある学生さんは、血液内科のある病院で初期臨床研修を受けて、面白さを実感してほしいと思います。

現在、全国の臨床研修病院の中で血液内科を標榜している病院は全体の2割も存在しない。