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スペシャルレポート

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Special Report04 基礎研究で培ったリサーチマインドを臨床に 浜松医科大学 医師 永田 泰之先

脳科学に興味がありました。

そう、話してくださるのは浜松医科大学血液内科で診療にあたられている永田泰之先生。血液内科を選択したのは、自身の進路を真剣に考え始めた医学部4年生以降だという。

当時は新医師臨床研修制度が始まっておらず、卒後まもなく診療科を決める時代

大学4年生の時には内科系に絞り込んで考えていくようになりました。そのほうが自分に向いていると。
その中でも一番「内科らしい内科」に進みたかったんです。内科らしい内科というのは、診断から治療、その後のケアまで、患者さんと一緒に診療していくことができるという意味です。
実際、病院実習で血液内科の患者さんを担当させていただき、その思いは強くなり血液内科に進みました。

先生のこれまでのキャリアについて教えてください。

浜松医科大学を卒業後、1年目は同大学附属病院で研修医として内科をローテートしました。卒後2、3年目は浜松市内にある聖隷浜松病院で内科各科と救急科、小児科をローテートしました。卒後4年目以降は同院で血液内科医として勤務しました。ちょうどこの頃に、内科認定医を取得し、以後、血液専門医、総合内科専門医、産業医を取得しています。
その後、2010年より大学院生として大学に戻り、解剖学講座の瀬藤教授のご指導の下で基礎研究を行い、2015年に学位を取得しました。大学院を修了後、浜松医科大学血液内科で診療にあっています。

大学に戻られる前の勤務で印象に残っている事は?

東京の白金にある東京大学医科学研究所(医科研)附属病院に半年間勤務させていただいた事です。臍帯血移植では世界的に有名な施設です。
白血病の移植治療のスタンダードは骨髄移植でしたが、この頃から臍帯血移植が普及し、自施設でも臍帯血移植が増えてきたころでした。残念ながら臍帯血移植ではあまりいい結果が出なかったんです。
そんな中でも医科研病院では臍帯血移植でも骨髄移植と同等の成績を挙げていたため、思い切って移植を勉強させていただこうと門を叩きました。もっとも勉強になったのは、スタッフの先生方の患者さんに対する真摯な姿勢と移植に対する情熱でしょうか。ひとつひとつが丁寧で、これは病棟のスタッフの方はじめ、移植チームがよく機能していました。
ここで学ばせていただいたことを浜松でも実践し、患者さんに還元していくことが使命だと感じています。

大学に戻られてからの活動について教えてください。

2010年からは大学院生として浜松医科大学へ帰局し、2012年からは解剖学講座細胞生物学分野瀬藤教授の研究室にお世話になり、多発性骨髄腫の細胞を使った基礎研究をおこないました。質量顕微鏡法という新しい手法を用いて造血器腫瘍細胞や血液細胞における脂質解析などに取り組みました。脂質に関する研究は血液分野ではあまり行われていませんでしたので、手探りの状態ではありましたが、そこからあらたな知見を見出して論文として成果を発表しています。

研究は楽しいですか?

楽しいです。
自分で仮説をたてて実験し、結果を検証してゆく過程が楽しいですね。実際に仮説どおりの結果が得られればうれしいですし、違う結果がでればその理由を考え次の実験を考えていくプロセスにはまります。
大学には本当に多くの人材がそろっています。血液内科の先生以外にも、他科の先生や実験機器センターの技術スタッフの方々に気軽に相談にのっていただけ、ヒントをいただける機会は、非常に恵まれています。

大学院生だと待遇面では様々な支援が必要だと思われますが、
先生が大学院で研究されていた時はどのようなものがありましたか?

まず、研究の時間をしっかりとるために入院患者さんを担当しない勤務体制を組んでいただいていました。
また、学外勤務なども実験に差しさわりがないように配慮いただきました。
大学院生の給与面については、ホームページをご覧になる若手の皆さんも気になるところかと思いますが、やはり病院勤務の頃よりも少し下がりました。大学生のころとは違いますが、基本的にフリーターですし、学費を納める必要もあります。
ただ、存分に研究させていただいているのでその点を加味すると許容範囲内です。
また、当直勤務などは忙しさに応じて調節することが可能ですので、実験の進み具合により日当直の回数はフレキシブルに調整させていただきました。

一週間の勤務例(永田先生)
実験実験/血液内科カンファランス
研究室のカンファランス実験/第三内科医局会(隔週)
内科外来勤務(学外)実験
検診センター勤務(学外)非常勤病院勤務(学外)
実験実験
当直や研究会・講演会の出席

大学院卒業について教えてください

大学病院は臨床のみならず研究を行うことができる点で一般の病院とは異なります。卒業後は大学に残り、基礎研究のみならず臨床研究を行っています。大学院で培った「研究」における考え方を応用し、臨床研究などに活かしていきたいと考えています。
また、大学病院では診療・研究とともに教育が三本柱ですから、学生さんや若手医師の教育にも力を注いでいます。
同時に、臨床医として現場に復帰しています。多発性骨髄腫について学んだ基礎医学の知識を臨床にも応用して、多発性骨髄腫の治癒を目標に治療法を確立できるよう努力しています。臨床といえば、浜松地区での造血幹細胞移植件数は増加傾向にあります。浜松造血細胞移植研究会などの活動を通して、東大医科研病院で学ばせていただいたことを皆様に還元し、移植成績の底上げを目指しています。

最後に、先生から見た浜松医科大学 血液内科について教えてください。

大西前教授が退官されたのち、小野先生を中心に臨床、研究、教育に奮闘しています。静岡県西部地区における血液診療の一翼を担い、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器腫瘍のほか、再生不良性貧血、免疫性血小板減少性紫斑症など幅広い診療が求められています。一方で、増加しつつある造血幹細胞移植にも精力的に取り組んでいます。研究面では、日本成人白血病研究グループ(JALSG)をはじめとした全国規模での臨床試験にも積極的に参加しつつ、浜松医科大学から研究成果を発信できるよう、基礎・臨床研究も進めています。大学スタッフは、中堅スタッフが中心となり、卒後研修を終えたばかりの若い先生方も加わり、この先は長期にわたり盤石と思います。立地上、関連病院も近く、グループ内の交流も頻繁で人間関係も良好です。まずは興味がある方、見学に来てください。

血液内科医の不足が全国的に叫ばれている中、若いチカラがあふれる同大学の血液内科。見学の際には、さらに本音のお話も聞けそうです。