血液内科のご紹介

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はじめに

血液内科病棟内

浜松医科大学第三内科診療科群・血液グループ(以下、当グループ)は、静岡県西部地区で発生した血液疾患患者を診療しています。特に当施設は、急性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液悪性腫瘍に対する化学療法や移植治療を数多く行っている静岡県の中心的な施設の一つです。スタッフは日本血液学会専門医8名で、それぞれ外来や入院診療を行っています。

血液悪性腫瘍では、化学療法が一般的に行われますが、近年では、各疾患に対する分子標的療法剤や移植治療の発展、支持療法の改善などにより、血液疾患の治療成績は目覚しい発展を遂げています。当院では、ガイドラインに沿った標準的治療を心がけ、移植治療も組み入れながら幅広く血液疾患の治療を行っています。また、当科は、静岡県の血液疾患診療をリードするとともに、数多くの血液専門医を育て、地域医療へ貢献してきました。浜松医療センター、磐田市立総合病院、聖隷三方原病院における血液診療は当科のグループ出身の先生たちで行われています。さらに、当グループ出身の4名の先生方が浜松地区で開業されており、血液疾患の診療を中心に地域に貢献されています。 一方で、当グループは、血液疾患の臨床研究や基礎研究も積極的に行っており、国内外の学術集会や学術雑誌において多くの発表実績があります。以下、その一部を紹介いたします。

当科における臨床研究について

当科における臨床研究について

臨床研究では、大西一功教授がJapan Adult Leukemia Study Group(JALSG:日本成人白血病治療共同研究グループ)の副代表を2005年度から努め、浜松医科大学に事務局が置かれています。JALSGは厚生労働省の白血病治療研究班と連携して、急性白血病の化学療法を中心とした治療成績の向上と日本における白血病治療の標準治療を確立するために多施設共同研究を行っています。

以前から当グループは、新規抗がん剤の開発にも携わってきました。特に、急性前骨髄球性白血病(APL)に関しては新規分化誘導療法の開発(Am80)、さらには再発APLに対する亜砒酸の治験と臨床研究を行ない、日本での同薬剤の承認と導入を中心となって努めてきました。現在、JALSGのAPL研究では、初発未治療のAPLに対して、APLに特異的に作用する亜ヒ酸やゲムツズマブオゾガマイシンをより早期から使用してさらに治癒率を向上させようとする臨床第II相試験(JALSG APL212試験)、強力な化学療法では治療合併症が多いことが問題であった65歳以上の初発未治療APLを対象に有害事象が少なく、効果も高い亜ヒ酸を用いた臨床第II相試験(JALSG APL212G試験)が進行中です。これらのAPLの臨床試験は、浜松医科大学に研究事務局があり、竹下明裕教授が研究責任者を務めています。今後、APLにおける新たな治療方法の確立が期待されています。小野孝明助教が、過去のJALSGのAPL臨床研究からAPLの予後因子を抽出する研究も行っており、付加的染色体異常がAPLの予後に与える影響 (Ono et al. Haematologica. 96:174-76. 2010), 高齢者APLの成績 (Ono et al. Cancer Science. 103(11):1974-8. 2012), CD56発現がAPLの予後不良因子であること(Ono et al. Cancer Science. 105(1):97-104. 2014)を明らかにしてきました。

当科における造血幹細胞移植治療について

当科における造血幹細胞移植治療について

当グループは、日本骨髄バンク、日本臍帯血バンクの移植施設として認定されています。2005年から本格的に臍帯血移植、高齢者に対する骨髄非破壊的前処置(やや抗がん剤の強さを弱めた移植前の処置)を用いた造血幹細胞移植にも取り組みはじめ、年間の移植件数が増加しました。2013年5月には静岡県で最初に非血縁者間末梢血幹細胞採取・移植施設として認定され、さらに当院で行える移植方法の選択肢が増えました。新病棟では14床のクリーンルームが完備され、年間10~20件以上の造血幹細胞移植を施行しています。浜松地区の移植治療の成績向上を目指して、浜松医療センター、磐田市立総合病院、聖隷三方原病院のスタッフたちと2ヶ月に1回、移植症例の検討会と勉強会を開き、研究発表なども積極的に行っています。2013年度は、第35回日本造血細胞移植学会総会で柳生友浩診療助教が「臍帯血移植におけるタクロリムスとmini-MTXによる急性GVHD予防の成績」を、第76回日本血液学会学術集会で小野孝明助教が「同種移植患者におけるインフルエンザワクチン接種後の抗体価の上昇」を解析し発表しました。

深津有佑(大学院生)が移植後の晩期合併症としての慢性腎臓病の解析を行い、2014年3月の第36回日本造血細胞移植学会総会のoral sessionに採択されました。このように、浜松地区からもも移植に関する有益で新たな情報を発信できるよう頑張っています。

当科における基礎研究について

慢性骨髄性白血病の骨髄像

小野孝明助教が、慢性骨髄性白血病(CML)の診療と研究にも積極的に取り組んでおり、BCR-ABL1遺伝子変異解析の検出方法としてPCR-Invader法が有用であることを報告しました。( Ono et al. Leukemia Research. 35:598-603. 2011) 現在は、継続して新規チロシンキナーゼ阻害剤の治験や耐性化機序において重要であるBCR-ABL1遺伝子変異解析の検出方法の研究(平成24年度科学研究費、研究代表者 小野)を行っています。

また、永田泰之(大学院生)は解剖学講座細胞生物学分野の瀬藤光利教授との共同研究として、質量顕微鏡法を用いた造血細胞の質量分析イメージング法の開発を行っています。患者サンプルから目的の細胞をフローサイトメーターにより分離し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、二次イオン質量分析法(SIMS)による質量分析イメージングを用いて細胞生物学的性質の解析を行っています。今後、血液腫瘍細胞における変化を見出して新たなバイオマーカーや治療標的を発見へつながることが期待されています。